2012年12月17日月曜日

冗長な(redundant)表現:bandほか

早速ですが、redundantな他の具体例を挙げてみます。紫字はネイティブチェッカーのコメントです。

1.
I joined a music band at high school.

 ↓

I joined a music band at high school.

A “music band” sounds redundant. (Most bands are involved with music).


2.
You say you play the flute, but we don’t have a music band. We only have a guitar club.

 ↓

You say you play the flute, but we don’t have a music band. We only have a guitar club.

‘Music band’ -> ‘band’ as ‘music’ is redundant.


3.
They defended for the rest of the game and won the victory.

 ↓

They defended for the rest of the game and won the victory.

You could probably delete “the victory”. Seems redundant (a victory = win).


4.単語レベルではなくこんな表現レベルも。
This is one of the traditional Japanese clothes made in Japan.

 ↓

This is traditional Japanese clothing. –OR– This is traditional clothing made in Japan.

“Japanese ... made in Japan” sounds a little redundant.

冗長な(redundant)表現:wave

ネイティブチェックで、修正理由としてredundantとあると、表現が冗長だからということです。

実際によく見る日本人の英文から一つ例を見てみましょう。

When I saw Jane on the street, I waved my hand to her.

文法的には間違っているように見えませんが、例えば、waveを英英で調べると、
to move your hand or arm from side to side in the air in order to attract attention, say hello, etc [OALD]
とあります。つまり、waveはすでに「手」の意味を含んでいるので、「手を振る」をwave my handとするとredundant(冗長)なのです。上記の英文だと..., I waved to[at] her.で十分なわけですね。

さて、このwaveという単語を他の英英辞典でも見てみましょう。
to raise your arm and move your hand from side to side in order to make someone notice you [LDCE]

to raise your hand and move it up and down or from side to side, for example to say hello or goodbye to someone who is not near you [Random house: Webster’s easy English dictionary]

to move your hand backwards and forwards [Chambers: primary dictionary]

Randomはノンネイティブ初級者用をターゲットとしており、Chambersは特に7歳以上対象のネイティブ用辞典です。
こうやって比較すると、一つの単語でもいろんな語義があって面白いですよね。

「英単語を英語で学ぶ」ことに興味のある方は、拙著「English脳で覚える英単語ハンドブック」(スリーエーネットワーク 中田達也監修・入江泉著)をぜひご活用ください。

ちなみに、本書ではwave(自動詞)は以下のように書いてあります。

[vi] You wave (= move your hand) when you say hello or goodbye to someone.
The man waved at me.
Wave to the children!
NOTE: You don’t need to say “wave my hand.” Wave includes “one’s hand,”

本書は上記のRandomChambersと同等、あるいはさらに易しい英語で、日本人学習者が読みやすいように書くことに努めました。


ネイティブチェックによるredundantの具体例はまたアップしたいと思います。

2012年11月16日金曜日

分詞の落とし穴2

分詞ネタは結構あります。こういうのはどうか。

This is the watch given to me by my sister.

このような英語をいつ、どんな場面で使うのか聞きたい。

日本語訳はこうである。
「これが姉からもらった腕時計です」

この訳は都合が良すぎます。なぜなら、この日本語訳を英語に直すと、
This is the watch I got from my sister.
であるはずだからです。

最初の文は直訳で「これが姉によって私に与えられた腕時計です」となりますが、この日本語が不自然であるのと同じくらいこの英語も不自然なのです。

なお、上記のような過去分詞の後置修飾でなく、I was given ... / This was given to me ... という単純なSVOOの受け身とはまた別問題です。過去の記事でも紹介しましたが、「Antiques Roadshow」という番組ではこれらが自然に使われていて興味深いです。
http://iwcnz.blogspot.co.nz/2012/05/blog-post.html

分詞の落とし穴

日本人が苦手な文法の一つに「現在分詞・過去分詞」があります。これはある固定観念に縛られているからかも知れません。まずは、後置修飾で見てみます。

【分詞の後置修飾の意味】
〈名詞+現在分詞+語句〉は「~している…」
〈名詞+過去分詞+語句〉は「~された…」

ほとんどの教科書・教材がこうなっていると思います。しかし、実際はそんな単純ではありません。

「名詞+現在分詞+語句」は常に進行形「(今)~している」の意味ではないのです。いつも言いますが、「文脈」次第です。たとえば、

the boy singing over thereだと、the boy who is singing over there「(今一時的に)向こうで歌っている少年」で「現在進行形」ですが、

the animals living in the seaは、the animals that live in the sea「海に住む動物」です。「今一時的に海に住んでいる動物」では意味が変です。

同観点が前置修飾でも生きてきます。
the singing birdthe bird that is singing「(一時的に)歌っている鳥」ではなく、the bird that sings「鳴き鳥」なのです。(日常生活でsinging birdという語句を使う機会はあまりないと思いますが…)

現在分詞=「~している」と思いこんでいるために、また、the singing birdという表現があるなら*the singing children「歌っている子どもたち」もいいんだろう、と思ってしまうのですね。


次に、過去分詞も、実は常に受け身「~された、~されている」の意味とは限らないのです。たとえば、以下のような前置修飾がわかりやすいかもしれません。

fallen leavesleaves that have fallenで「落ちてしまった葉=落ち葉」ですね。fallenは受け身ではなく完了の過去分詞なのです。

ちなみに、falling leavesleaves that are fallingで「(今まさに)舞い落ちている葉」ですね。

2012年11月13日火曜日

英語を話したい人は「ライティング」をすべし。

たまには、わたしの持論を一つ。

「英語を話せるようになりたい」という人は多いと思いますが、「会話をする」環境にないことも多いと思います。そういう方は、ひたすらライティングの練習をするべきです。

「正しい英文を書ける人は自分の言いたいことを伝えられる」
「その前提で、『話す』はひたすら場数を踏むのみ」
というのがわたしの持論。

単に英語で日常会話がしたいのであれば、多少発音が悪くてもいいのです。正しい英文を書く人は、たとえ「話す」ときに辞書を引けなくても、たとえ「話す」という行為が瞬発的なものであっても、ある程度正確な文構造で、自然なコロケーションを使って話しているはずなのです。極端に言えば、相手が聞き取れない単語が多少あったとしても、正しい文構造や文脈で相手の理解を助けているのです。さらに、話している最中に、伝えたい言葉の英単語を思い出せなくても、全く見当がつかなくても、あるいは万一相手に伝わらなかったときでも、英文を書ける人(=英文を作ることのできる人)は、別の表現で言い換えられる技術を持っているのです。

ただし、ライティングの練習は、書きっぱなしではダメです。必ず英作文のプロやネイティブ校正者の添削を受けること。その添削過程で自然な文法、自然な単語・熟語の使い方、コロケーションをどんどん吸収していくのです。

進め方を考えてみますと、文法に焦点を当てたらこんな感じでしょうか。
例:「3~5文の英文を書きましょう。ただし、受け身の文を含めること」
なぜ1文でないかは、受け身の文が自然かどうかを判断する「文脈」が必要だからです。この課題だと、まずは自分なりに自然な受け身の文を1文考えて、そのあと前後に文脈をつけてみるとよいです。形式は地の文でも対話文でも構いませんが、対話文のほうが英語を「話す」練習になっていいかもしれません。

例:Aさんが考えた受け身の文:The shop is opened 24 hours.
文脈つきの文章
A: I’m hungry.
B: Me, too. Let’s go to the convenience store and get something to eat. It’s opened 24 hours.
A: Good idea.

はい、添削者はきっとIt’s open 24 hours.と直すでしょう。中学英語教材の受け身の事項で本当によくある不自然な受け身の文を利用してみました。

なお、表現に突っ込むと、「英語が話せるようになりたい人」と「英語で会話ができるようになりたい人」は異なります。なぜなら、後者は「聞きとり」が必須だからです。当然なのですが、相手の言うことが聞き取れないと「会話」はできません。正しい英文が書けて相手に言いたいことが伝えられることと、会話ができることは別問題です。

読む、書く、聞く、話す、の四技能で一番難しいのは「書く」だと思います。これをマスターしたら、怖いものなし!


追記:
持論というからには…

わたしの場合、5年間英語圏に住みましたが、留学経験がなく、いきなり海外生活スタートです。学校に通ったわけでもなく、地元の企業に勤めたわけでもなく、平日は自宅(仕事)でほとんど外出しなかったので、いわゆる場数はそんなに踏んでいません(それでも英語に触れる環境は日本の生活と雲泥の差ですが)。よって、残念ながら、自信を持って「会話力」があるとは言えません。四技能の中で一番苦手なのが「リスニング」というタイプです。

ですが、仕事上、ひたすら英語を書く環境にあるために、会話で「あなたの言っていることがわからない」と言われたことは一度もありません。語彙レベルも、英検でいうと準2級レベルほどの語彙しか使っていないと思います。
ただし、英検準2級レベルの語彙で正確な英文を書くのはそんなに易しいことではありません。訓練が必要です。

2012年11月6日火曜日

関係代名詞を使った書きかえの落とし穴

関係代名詞はひと言で説明できない文法の一つですが、よくあるこんな書きかえ問題から考えてみます。

問い:次の2文を、関係代名詞を使って1文で表しなさい。
I have a dog. It can run fast.

解答:I have a dog which [that] can run fast.

最初の2文を見ると、I have a dog.と文が完結していますので、Iは犬を1匹しか飼っていないんだな、と頭にインプットされます。しかし、解答の文を見ると、あれ?と感じるわけです。なぜなら、関係代名詞の制限用法だと、Iは2匹以上の犬を飼っていると捉えるからです。

よって、
I have a dog. It can run fast.
同意の2文を1文で表せという問いなら、
I have a dog, which can run fast.
となるはずなのです。(非制限用法ではthatは使えません)

また、いろんな関係代名詞の問題を見ていますと、先行詞の冠詞はaでもtheでもよいと曖昧に思っている人が多いと感じざるを得ませんが、極端に言えばコンマの有無よりも重要だと思います。会話ではコンマは発音しませんし、aとtheの違いの感覚を身につけたいものです。

2012年11月2日金曜日

underは「~未満」?

more than ~を取り上げた機会に、意外な面を持つunderにも触れたいと思います。

underは和英辞書には「〈年齢・時間・価格・数量などが〉~以下の、~未満の」とあります。
辞書によっては「~未満」しか載っていないようです。

いずれにしても、先のmore than ~の例の通り、「~以下」と「~未満」では大きな違いが生じる可能性があります。

通常、〈年齢〉においては、「~未満」の意味、つまりunderの後の年齢を含みません。

例:
Children under six must not take this medicine.
「6歳未満の子どもはこの薬を飲んではいけません」

「6歳以下」は6 and under6 or youngerのように表すことができます。

 

しかし!!

『スポーツ』では、〈under+年齢〉は「~歳以下」が通例なのです。

たとえば、サッカーのFIFA U-20 World Cup は「20歳未満」ではなく、「20歳以下」ですね。(Uunder を表す)

奥が深いです。

2012年10月30日火曜日

笑えるNZの新聞の誤植

仕事用の写真を探していて,こんな写真が見つかり,思わずプッと吹き出してしまった。



日本人が血液型で性格診断をするという話。
TYPE AOって!

2012年10月24日水曜日

more than ~の意味は?

とてもスローな更新にお付き合いいただき,ありがとうございます^^;

改めてバックグラウンドを申し上げますと,わたくしは教師ではありませんので,生徒はおりません。英語教材の執筆・編集・校正がお仕事です。したがいまして,旧ブログ及び本ブログで扱っている共通の誤りは,学習者から得たものではなく,英語教材の執筆者・編集者・校正者,つまり,英語ができるはずであろう人たちから得たものです。しかも,ほとんどが初級~中級レベルの教材です。

さて,今日はmore than ~です。
わたくしが何年もの間に見てきた訳し方の誤りとしてはトップ3に入るかもしれません。

more than ~の意味として,教科書の巻末リストや英和辞書に「~以上」とあります。これをそのまま鵜呑みにして,
A lot of people have more than one cell-phone.
「多くの人が携帯電話を1台以上持っている」
と訳してあるケースが本当に多いんです。いえ,ほぼ100%そうなっています。

以前に,わたしが原稿で「2つ以上」書いたのを,出版社の編集者さんが途中の段階で「1つ以上」と修正されたことさえも(泣)
そもそも,「1台以上持っている」と言うべき状況が思い浮かばず,日本語的にも違和感があるのですが。

〈more than(数字)〉(数字)を含まないのです。「~より多い」が正確な意味です。more than three wordsだと「4語以上」です。「以下」と「未満」のように使い分けられる日本語があればよかったのですが。

よって,上の英文は,「多くの人が携帯電話を2台以上持っている」が正しいですね。
「2以上」は,誤解を生まないように,two or moreとすることもできます。


では,「~以上」いう訳があり得る例です。
More than 100 people came to the seminar.
「そのセミナーには100人以上の人が来た」

100人と101人の違いでは大きな問題にはならない場合,「~以上」でも支障ないわけです。
また,大きな数字のときはたいてい驚きを含んでいますので,
「そのセミナーには100人を超える人が来た」
とすれば,「~より多い」のニュアンスが出せますね。

2012年8月4日土曜日

日本帰国&No, thank you.

しばらくご無沙汰してしまいました。

実は,5年間のニュージーランド生活に(一旦)終止符を打ち,家族共々6月に日本へ帰国しました。
現在,東京都杉並区に新居を構え,また新しい生活を始めております。
今後も,海外在住経験を生かして日本の英語教育を応援していきます。
引き続きよろしくお願いします!


早速,ネタを一つ。

中学英語や初級英語などで見られる,典型的なこのやりとり。

Would you like something to drink? -- No, thank you.
解説:断るときはNo, thank you.と言います。

でも,実際の英会話の場面では"相手の好意"に対してストレートにNoと言うときつい感じがします。
Thanks, but I'm fine now.
Thank you, but I've just had ...

相手の好意に対するお礼を言ってから,不要である理由を簡単に沿えるのがマナーです。

同様に,
Can I use this pen/computer? -- No, you can't.
などの応答も定番ですが,愛想がなさ過ぎます。

シチュエーションによりますが,
Sorry, but you can't. I'm using it now.
など,Noを言わずに答える言い方が多くあります。
断るのが申し訳ないという気持ちが少しでもあれば,Sorry, but ... と言えばいいのです。

欧米人はYes/Noをハッキリと言う,とよく言われます。英米で若干の違いはあるかもわかりませんが,それはビジネス上など,Yes/Noをはっきりと伝えなければならない大事な場面でのことのはずです。質問内容や相手(目上の人など)によってふさわしい応答があります。相手を敬う気持ちから来る表現は,日本語の敬語の感覚でよいのです。

2012年5月18日金曜日

生の英語「to不定詞の形容詞用法」

看板から学ぶ生の英語,第2弾。

ロトルアのRainbow Springsにて。キウイの保護施設があります。


中学英語だとmore things to see and doとしがちですが,more to ~としているところがネイティブらしい表現と言えそうです。

2012年5月14日月曜日

お勧めの受動態のリスニング素材

無生物主語つながりで,一つ思い出しました。

わたしのお気に入りのテレビ番組にAntiques Roadshowというイギリスの番組があるのですが,日本の「なんでも鑑定団」に似ていて,鑑定士がイギリスの各地をまわり,地元の人が骨董品を持ち寄って鑑定してもらいます。
がらくたもあれば非常に価値のあるアンティークもあり,会話の最後の鑑定士による推定の値付けがドキドキし,それを聞いた所有者の反応も面白いです。

この番組が好きな理由は,イギリスののどかな風景やイギリス英語が楽しめると同時に,「受動態」がふんだんに聞けることです。
会話は鑑定士と骨董品の所有者との間で交わされますが,「物」が主体なので,必然的に無生物主語の受動態の文が多く,It was given to me ... やI was given ... など,普段の日常会話では滅多に使われない表現まで堪能でき(日本の英語教材ではよく不自然に使われますが・・・),受動態のリスニング素材としてとてもよいと思います。

レベルはTOEICでいうと800以上と推定しますが,画面に出てるオブジェクトについてひたすら話しているので,トピックすら推測できないという事態はありません。また,家族の説明や日本を含む世界各国の歴史など,会話の内容はある程度決まっているので,ほどよく推測ができるのも良い点だと思います。

生の英語「make OC」

中学校で習う文法の一つに〈make+O+形容詞〉「Oを~にする」があります。
この手の無生物主語の表現は日本語にはあまりないからか,日本人が書くと「むりやり英語」が多い気がします。

生の英語を見てみましょう。下記看板では,中学校でもお馴染みのmake O sickが使われています。
(Jennyというのは檻の中にいるKeaというニュージーランド鳥の名前です)


なお,拙著「English脳で覚える英単語ハンドブック」では,実際に各単語がどのように使われているかを見てもらうべく,このような看板の写真を多く載せています。ご興味があればぜひご覧ください。

2012年5月7日月曜日

〈a+単数名詞〉か〈any+複数名詞〉か?

前回のanyを発展させてみます。

「~はありますか」の表現は〈a+単数名詞〉なのか〈any+複数名詞〉なのか?

前回のポイントで分かる通り,日本語には名詞の単複がないので,日本語には「1つ」とか「いくつか」などと現れません。ですので,〈a+単数名詞〉と〈any+複数名詞〉は一見使い分けが難しいように思えますが,常に同意で置き換えられるものではないのです。あくまで話者の予測や場面状況によって単数か複数かをイメージして使い分けているのです。

例えば,「お子さんはいますか」と尋ねるとき,
Do you have a child?
なのか,
Do you have any children?
なのか?
ふつうは後者です。理由は前回述べた理屈と同じで,前者は相手には子どもがいるとしても1人だろうという気持ちから出る英文なので,ある程度の条件がない限りはやや不自然な感じです。
もちろん,Do you have any children?と尋ねて単数で答えても不自然ではありません。
例:Yes, I have a son. [=a child]

同様に,「兄弟はいますか」はほぼ成句でDo you have any brothers or sisters?と言いますが,Do you have a brother or a sister?ではないのも上記の理由からです。

次に,「週末は予定がありますか」だとどうでしょう。
Do you have a plan for this weekend?
ではなく,計画は複数あると見なして,ふつうは
Do you have any plans for this weekend?と聞きます。
前回の引き続きですが,これも日本語訳で「週末はいくつか予定がありますか」と,anyを「いくつか」と訳出しているのを見かけますが,ふつうはany plansと複数で表すので,日本語では複数を強調する必要はなく,「週末は(何か)予定がありますか」で十分なのです。

There is/are ~構文でも同じです。

「この辺りにレストランはありますか」を英語で表すと?

ふつうは複数軒あると期待して,
Are there any restaurants around here?です。

でも,周りにレストランがなさそうな様子だと,1軒でもあればいいなという思いを込めて,
Is there a restaurant around here?
と単数で言うかもしれません。
(逆に,明らかに何もなさそうな田舎でany restaurants と聞くと,皮肉になるかも?!)

「この辺りによいレストランはありますか」でも同様です。
Are there any good restaurants around here?
だと複数あるだろうと期待する気持ちが伺えますが,
Is there a good restaurant around here?
だと,よいレストランはあったとしても1軒だろう,というように聞こえます。

一方,「この近くに郵便局はありますか」だとどうでしょう?
郵便局は1箇所のエリアに1軒がふつうなので,
Are there any post offices near here?ではなくIs there a post office near here?となるでしょう。

any/someの不自然な訳

中学ではanyの意味としてたいてい「(疑問文・否定文で)いくつか(の),いくらか(の)」などと習うようですが,文全体の訳になると違和感があることがとても多いです。
教科書によっては巻末リストに「訳さないことも多い」と書いてあるのですが,特に中1教材で,100%これを訳出する傾向にあるのです。中1レベルでは,問題中で日本語と英語を並列する際,日英で1語1語対応して示さなければ難しいという暗黙の了解があるようですが,無理矢理に訳すと時に不具合もあるのです。

anyを「訳さないことも多い」典型的な例を見てみます。

Do you have any friends in Japan?

この文の訳が,たいてい「あなたは日本に友達が何人かいますか」「あなたは日本に何人かの友達がいますか」となっています。

anyを「何人か(の)」と訳出しているのですが,これが「訳さないことも多い」の例で,「あなたは日本に友達がいますか」で十分なのです。この〈any+名詞の複数形〉は,特に複数を意図しているものではないからです。
理由は,逆に「あなたは日本に友達がいますか」を英文に直すとどうなるか,考えてみましょう。

Do you have a friend in Japan?

でしょうか。この文はなんだか変な感じがします。なぜなら,a friendと単数にすると,相手には「友達が1人しかいない」と決めつけて尋ねている感じがして,相手に失礼になります。友達は複数いるという期待のもと,"a friendではなく自然にany friendsになっている"だけで,これを「何人かの友達」と敢えて複数を強調する必要はないのです。


someや不可算名詞でも同様です。

Can I have some water?

この訳を,「お水をいくらかいただけますか」や「お水を少しいただけますか」などとsomeを訳出しているのをよく見かけますが,「お水をいただけますか」で十分です。なぜなら,waterは不可算名詞なので,aがついたり,複数形になったりしません。よって,"waterに不可欠な語として自然についたsome"であって,このsomeは分量を意図しているのではなく,「いくらかの」とか「少しの」などと分量を強調する必要はないのです。話者がもし分量を意図しているなら,Can I have a glass of water?Can I have a little water?などと具体的に示すはずなのです。