2013年3月21日木曜日

新指導要領 「文型」→「文構造」

今回の中学・高校の新指導要領では,「文型」という表現を避け,「文構造」とするとのこと。一見,誤解を受けそうですが,これは,第1文型~第5文型まで,文の型を5つに分けない,という意味でなく,SVOSVOCなど5種類の文構造の指導は残ります。 
例えば,設問で言うと,

He gave me a present.

という文について,主語,動詞,目的語などの要素を考えさせたり,SVOOなどと構造を考えさせたりする問題は可能です。

しかし,He gave me a present.という文を,「第何文型か書きなさい」という設問はなくなるということでしょう。わたしもこれは良くないとずっと思っていました。そもそも,1か2か3かの数字を答える意味がないと思います。つまり,mea presentgaveの目的語だと理解している生徒が,SVOOは第3文型だっけ?第4文型だっけ?第5文型だっけ?と悩むのは無駄だと思うのです。

個人的には,英文を理解したり英文を書いたりするのに「文構造」を理解することはとても重要だと思います。

2013年3月19日火曜日

「命令文」という言い方をやめたい!?

前のブログでも書いたと思いますが,「命令文」について改めて触れたいと思います。

中学1年で習う「命令文」。たいてい以下のように解説されると思います。

・「~しなさい」というとき,動詞の原形で始める。
 例:Come here. ここに来なさい。

pleaseをつけると「~してください」と丁寧になる。
 例:Please come here. ここに来てください。

しかし,各種教材では学年が上がってもこの公式に沿って意味を書くものだからおかしくなることがあります。

A: Excuse me. Could you tell me how to get to the station?
B: Go straight and turn right at the second corner.
 まっすぐ行って,2つ目の角で右に曲がりなさい。

道案内の定番場面ですが,これだとBは見知らぬ人に偉そうです。形は命令文でも,相手の利益になる内容では,「~してください」なのです。

レシピではどうでしょう?

Add the vegetables and boil for 30 minutes.
野菜を加えて30分煮なさい。

書き言葉のレシピなら「~煮る。」という常体,リスニングなどで作り方を話しているなら「~煮てください。」が適切です。

その他,(Please) Say hello to your parents.やHave a nice day.は決して「命令」ではないわけで,1年冒頭のクラスルームイングリッシュの教師の発言Quiet, please.では,pleaseは命令文に丁寧さを加えるのではなく,命令を強める働きをしています(指導書にも記述あり)。

と考えると,そもそもこの「命令文」という用語がいけないのかもしれません。また,文法の解説に『「~しなさい」というとき,~』といった意味を固定することに抵抗があります。

日本語で英語を学ぶといろんな支障が出てくるほんの一例です。そして,教材を作る際に常につきまとう「訳」。わたし自身がワークを執筆するときは,極力「訳」のない,英語だけで完結する問題形式を選びます。「訳」を使わざるを得ない場合は,できるだけ特定の場面,それ以外に「訳」は考えられないだろうという英文を選びます。中学英語ではなかなか難しい点もありますが,もっともっとよい教材ができるはずです。

2013年3月6日水曜日

勧誘のmustとmustの疑問文

mustの意味・用法は,義務・必要「~しなければならない」と推量「~に違いない」がよく扱われますが,You must ~と言えば,「ぜひ~してください」という『強い勧誘』の意味でもよく使います。
我が町の紹介などのテーマで中学教科書にも登場するようですが,勧誘として習わないため,「あなたは~しなければなりません」のような訳にならないように注意が必要です。

You must come and see me next time.
ぜひ次回は私に会いに来てください。

If you go to Tokyo, you must visit the shop.
東京に行くなら,絶対その店に行くべきですよ。

また,相手にある本を強く勧めるなら,You must read this book.と言えます。
書評などで,名詞mustを使ってThis book is a must for (). / This is a must book for ().のような表現も可能ですが,これも,()に読む義務があるというより,「()にはぜひ読んでいただきたい本」といった「強い勧誘」ですね。

ODEの名詞mustの意味:
<informal> something that should not be overlooked or missed.
なお,新英和大辞典やジーニアス英和にこの助動詞mustの「強い勧誘」は載っていないのですが,現代英文法講義にはしっかりと載っていました。


次に,mustの疑問文です。
最近の中学教科書では全く扱わないか,文法のまとめで例文を載せる程度に留まっている印象です。実際はほとんど使わないからと思ってよいでしょう。

このmustの疑問文の意味ですが,単純に「~しなければなりませんか」という義務・必要の疑問文というよりも,「本当はしたくない」というニュアンスが含まれています。

例えば,Must I do my homework now?だと,本当は今それをしたくないという気持ちです。(--> I want to do it later.)

Must we go that restaurant for dinner? (--> I don’t want to.)
Must you make that awful noise? (--> I don’t like it.)

2013年3月5日火曜日

例文作成時のこだわり2〈want to ~〉

前回の「例文作成時のこだわり」の別の例です。

want to ~「~したい」は中学2年で習いますが,I want to ~は子どものわがままのような印象なので,大人が公共の場で言うときはI’d like to ~がよい,などの説明がよくありますよね。

〈ホテルで〉
例:I want to have a single room. → I’d like to have a single room.
「シングルルームをお願いします」

では,want to ~の例文を扱わなければいけない状況ではどうするか。こんな例文どうでしょう。

I wanted to meet him, but I couldn’t.
「彼に会いたかったのですが,会えませんでした」

過去のことだとwant to ~は自然に使えるのです。

否定文や三人称主語,現在完了などでもさほど違和感ない文ができます。
I don’t want to bother you.
He doesn’t want to sell his car.
I’ve always wanted to come here.
Call me if you want to come.
Do you want to come with us?

ちなみに,最後のDo you want to ?wantの持つ「欲望」という意味合いよりも勧誘・提案です。米人にとっては一般的ですが,比較的丁寧な言葉を好むイギリス英語では,親しい仲でもWould you like to ?が一般的なようです。逆に言うと,米人にとってはWould you like to ?はやや丁寧すぎてよそよそしい感じがするのかも知れません。